【採用担当者必見】技能実習生と特定技能の違いと移行方法・手続きを徹底解説

技能実習生と特定技能の違いと移行方法・手続きを徹底解説

外国人材が解決する日本の人材不足危機とその現実

日本は深刻な労働力不足に直面しており、特に介護・医療業界では人材確保が緊急の課題となっています。2024年12月末時点では284,466人の特定技能外国人が在留しており、前年比136%という急激な増加を示していることからも、外国人材への依存度の高さが伺えます。

2024年6月末時点で、日本に在留する外国人358万8956人のうち、約11.8%の42万5714人を技能実習生が占めており、これは日本の労働力構造において外国人材が不可欠な存在になっていることを物語っています。

なぜ外国人材活用が企業存続の鍵となるのでしょうか。それは単純に人手不足を補うだけでなく、以下の理由からです。

  • 労働力の安定確保:日本人の採用が困難な業界において、継続的な労働力を確保できる
  • 年齢構成の改善:20~30歳の若い人材が中心となり、職場の活性化に寄与
  • 夜勤・体力労働への対応:体力を要する業務に意欲的に取り組む人材が多い

介護・医療業界における人材確保の緊急性は特に高く、高齢化社会の進行とともに需要は拡大する一方で、日本人の従事者数は減少傾向にあります。外国人材の活用は、この構造的な問題に対する解決策として徐々に一般的となりつつあります。

知らないと損する技能実習生と特定技能の根本的違い

技能実習生と特定技能の最も重要な違いは、制度の目的にあります。この違いを理解せずに外国人材を受け入れることは、企業にとって大きなリスクとなります。

「母国のための技能習得」と「外国人材労働力の受け入れ」という目的の決定的な差

技能実習制度は、日本で技術や知識を得て、それを国に持ち帰って母国の発展に寄与してもらうための制度です。つまり、労働力確保を目的とした制度ではありません。

一方、特定技能制度は、日本の労働力不足への対策として、特定産業分野の16分野で、外国人労働者の受け入れを促進することを目的として2019年4月に導入されました。

制度設計の背景にある政府の意図

政府が特定技能制度を創設した背景には、技能実習制度の限界があります。技能実習制度は「国際貢献」を建前としながらも、実際には労働力として活用されているという現実がありました。特定技能制度は、この問題を解決するために、明確に「労働力確保」を目的とした制度として設計されています。

企業が理解すべき法的位置づけの重要性

この目的の違いは、法的な位置づけや企業の責任範囲にも大きな影響を与えます。

  • 技能実習:「実習」という名目のため、労働者としての権利保護が限定的
  • 特定技能:明確に労働者として位置づけられ、日本人と同等の権利保護が必要

採用担当者が押さえるべき12項目の詳細比較表


技能実習と特定技能の簡単比較表としてご利用ください。

項目技能実習生特定技能1号
目的技能を習得し母国で活用即戦力として活躍
就労期間最長5年(1号:1年、2号:2年、3号:2年)5年(更新可能)
転職不可(原則)可能(同一分野内)
技能日本語・介護実習日本語・介護日本語・介護試験
募集人数3人まで常駐職員数と同数
失踪率高い低い
年齢構成20~30代が中心20~30代が中心
性別比率男女比は職種により異なる男女比は職種により異なる
給与水準最低賃金レベル日本人と同等以上
住居確保企業責任企業責任(支援計画に含む)
日本語能力入国時:N4程度N4程度+分野別日本語
在留資格変更帰国または特定技能へ移行更新または他の在留資格へ

就労期間3年or5年

在留期間については、技能実習が最長で5年までと定められているのに対し、特定技能は2号に移行できれば上限がありません。この違いは、企業の人件費や経営戦略に大きな影響を与えます。

転職可否が企業の人材投資ROIに与える影響

技能実習生は受け入れ先の企業を変更することはできませんが、特定技能で雇用された外国人は転職ができますこれは企業にとって良い面と悪い面の両面を持ちます。

メリット:より良い条件を提示することで優秀な人材を確保できる 。

デメリット:投資した教育費用が転職により無駄になるリスクがある。(日本人も同様)

失踪率の違いが示すモチベーション格差

技能実習生の失踪率が高い理由は、制度の構造的問題にあります。転職ができないため、労働条件に不満があっても合法的な解決手段が限られており、結果として失踪という選択肢を取らざるを得ないケースが発生します。

一方、特定技能では転職が可能なため、不満があれば合法的に転職することができ、失踪率の低下につながっています。

日本人採用との費用対効果を数字で徹底比較

初期採用コスト:日本人と外国人材の詳細内訳

就職みらい研究所が発表している「就職白書2020」(※)によると、日本人の中途採用1人あたりにかかる採用コストの平均は103.3万円でした。

これに対して外国人採用の場合

海外在住の外国人採用

  • 海外在住者を採用する場合の想定費用は約100~150万円
  • 海外在住の外国人を採用する際の費用は約86万5000円から198万円程度

国内在住の外国人採用

  • 国内在住者を採用する場合、住居準備費用が発生するケースでは約62万5000円から128万円程度

採用スピード比較:即戦力確保までの期間差

日本人の中途採用の場合、求人掲載から内定まで平均2~3ヶ月、入社から戦力になるまで1~3ヶ月程度かかるのが一般的です。

外国人材の場合

  • 国内在住者: 1~2ヶ月で採用可能、即戦力性は個人差あり
  • 海外在住者: 3~6ヶ月程度、ただし特定技能の場合は技能試験合格済みのため即戦力性が高い

夜勤・体力労働における外国人材の優位性

特に介護・医療業界において、20~30代の若い外国人材は、夜勤や体力を要する業務に対して高い適性を示します。これは日本人労働者の高齢化により確保が困難になっている労働力を補う重要な役割を果たしています。

数字やそれ以外の定性的な部分について日本人と外国人に違いはありますが、違いを理解し自社に合った採用を検討し、必要に応じて人材会社への相談をご検討ください。

技能実習から特定技能への移行を成功させるガイド

移行タイミングを見極める3つの判断基準

移行できるのは、技能実習2号を修了してからです。具体的なタイミングは以下の通りです。

  1. 技能実習2号を良好に修了していること
    • 技能実習を2年10ヶ月以上修了
    • 技能検定3級又は同じレベルの技能実習評価試験への合格
    • 技能実習生に関する評価調書がある
  2. 対象職種・作業内容の関連性
    • 技能実習の職種と技能実習の職種に関連性があることが重要
    • 同一分野での移行の場合、技能試験が免除される
  3. 法的要件のクリア
    • 技能実習法の「改善命令」を受けていないこと

必要書類準備から許可取得までの詳細フロー

移行手続きの流れは以下の通りです。

  1. 特定技能外国人と企業が雇用契約を締結
  2. 特定技能外国人の支援計画を策定
  3. 事前ガイダンスの実施、健康診断の受診
  4. 在留資格変更許可申請を出入国在留管理庁に申請

必要書類の一覧

  • 在留審査申請書(在留資格認定証明書交付申請書)
  • 技能実習修了証明書
  • 雇用契約書
  • 申請人の能力や状況を提示する書類
  • 税金・年金・健康保険関係の書類
  • 雇用企業に関する必要書類
  • 支援関係の書類
  • 産業分野別に関する必要書類

移行期間中に発生しがちなトラブルと対策

審査にかかる期間は、おおよそ1~2ヶ月です。この期間中に発生しがちなトラブルと対策をご紹介します。

よくあるトラブル

  • 在留期間の満了と審査期間のタイミングずれ
  • 必要書類の不備による審査遅延
  • 雇用契約条件の不一致

対策

  • 「特定技能1号」で就労予定の受入れ機関で就労しながら、移行のための準備を行うことができる「特定活動(6か月)」への在留資格変更という特例措置の活用
  • 早期からの書類準備と専門家(特定技能の登録事業者)への相談

在留資格変更における法的な注意点

移行時に特に注意すべきポイント

  • 保証金の徴収禁止:いかなる名目でも金銭等の財産を管理してはならない
  • 違約金契約の禁止:契約不履行による違約金を定めてはならない
  • 適正な報酬の支払い日本人と同等以上の賃金を支払う必要がある

特定技能人材受け入れ実務:導入から運用まで

受け入れ決定から就労開始までのフロー

ケアグローバルのサービスフローでは、以下のステップで効率的な受け入れが可能です。

  1. 相談・面接(1ヶ月目)
    • 募集人数の2~3倍の人数を準備
    • 現地またはオンライン会議形式での面接実施
    • 介護資格を取得済みの学生が対象
  2. 書類手続き(2ヶ月目)
    • ビザ取得手続きに必要な各種書類作成
    • ケアグローバルが丁寧にサポート
  3. 入社手続き・就労開始(3ヶ月目)
    • 入国後、空港から事業所まで送迎
    • 市役所での必要手続きを代行

義務的支援計画策定の具体的手順とポイント

特定技能所属機関等は、1号特定技能外国人支援に要する費用について、直接又は間接に当該外国人に負担させることはできません。

義務的支援の主な内容

  1. 事前ガイダンスの実施
    • 労働条件など特定技能雇用契約の締結前にあらかじめ外国人本人が把握することが望ましい情報の提供
  2. 生活オリエンテーションの実施
    • 日本での生活に必要な基本情報の提供
    • 地域のルールや文化の説明
  3. 住居確保・生活に必要な契約支援
    • 銀行その他の金融機関における預金口座又は貯金口座の開設及び携帯電話の利用に関する契約その他の生活に必要な契約に関し、必要な書類の提供及び窓口の案内を行い、必要に応じて当該外国人に同行する

住居・生活支援で企業が負う責任範囲

住居の確保における企業の責任

  • 居室の広さについては、少なくとも技能実習生について求められている寝室について1人当たり4.5㎡以上を満たす必要があります
  • 敷金・礼金等は外国人本人負担だが、保証料は企業負担
  • 家電、家具、食器等の備品提供(実費相当額での徴収可能)

登録支援機関にワンストップで任せる

1号特定技能外国人支援の全部の実施を委託する場合の委託費用については、支援の対象となる1号特定技能外国人の数、特定技能所属機関の事業所数や場所等に応じて異なるため、複数の登録支援機関から見積りを取ることが重要です。

細かな費用まで含めた費用対効果の徹底分析

特定技能受け入れにかかる費用

初期費用の内訳

  • 人材紹介手数料: 理論年収の20~30%
  • 在留資格申請費用: 4,000円(収入印紙代)
  • 住居確保費用: 敷金・礼金・仲介手数料等
  • 渡航費用: 10~20万円(海外採用の場合)

継続的な費用

  • 登録支援機関委託費: 月額2~5万円程度
  • 住居関連費用: 月額5~10万円程度
  • 各種手続き代行費用: 年間10~20万円程度

日本人採用と比較した3年間の人件費

3年間の総コスト比較(1人当たり)

日本人中途採用

  • 初期費用: 103.3万円
  • 年間給与: 400万円(3年間で1,200万円)
  • 総額: 約1,303万円

特定技能外国人

  • 初期費用: 100~150万円
  • 年間給与: 350万円(3年間で1,050万円)
  • 支援関連費用: 年間50万円(3年間で150万円)
  • 総額: 約1,300~1,350万円

管理費用を削減する受け入れ体制の構築

コスト削減のポイント

  1. 自社支援の活用: 登録支援機関に全面委託せず、可能な業務は自社対応
  2. 複数人同時受け入れ: スケールメリットによるコスト削減
  3. 社宅・寮の活用: 賃貸契約に係る費用の削減

削減することは可能ですが、その分調査や対応に時間が取られてしまうため、経営者や従業員が本来の業務に集中するためにも登録支援機関への依頼を推奨します。

費用対効果が良い人数と時期

人数の規定と運用方法

  • 介護分野では常駐職員数と同数まで受け入れ可能
  • 初回は2~3人から始め、運用習熟後に増員するのが効果的

時期の最適化

  • 技能実習生からの移行タイミングに合わせた受け入れ
  • 4月・10月の入国時期を狙った計画的な採用

よくある受け入れ失敗例から学ぶリスク管理方法

多発する受け入れトラブル:原因と対策の例

よくある失敗例

  1. コミュニケーション不足による誤解
    • 原因: 日本語能力の過大評価、文化的背景への理解不足
    • 対策: 定期的な面談、多言語対応の仕組み構築
  2. 労働条件の相違
    • 原因: 事前説明不足、期待値の齟齬
    • 対策: 詳細な雇用契約書の作成、定期的な労働条件の確認
  3. 生活支援の不備
    • 原因: 支援計画の形骸化、実効性のない支援
    • 対策: 具体的な支援スケジュール作成、定期的な効果測定

コミュニケーション不足が招く離職リスク

雇用された先の会社で働いてみたが、実際の待遇がよくなかったり、社員とのコミュニケーションが上手くできないと、早期離職してしまう外国人もいます。

対策として重要なのは以下です。

  • 双方向のコミュニケーションの実現
  • 外国人の意見に耳を傾ける姿勢
  • 定期的な面談の実施(3ヶ月に1度など)

外国人・日本人と先入観を持ってしまいがちですが、1人1人尊重して接することが大事です。

法令違反を防ぐためのチェックポイント

チェックリスト

  • 日本人と同等以上の賃金を支払っているか
  • 義務的支援を確実に実施しているか
  • 保証金や違約金の徴収をしていないか
  • 適切な住居環境を提供しているか
  • 労働時間・休憩時間を適正に管理しているか

文化的な垣根を乗り越える職場環境づくり

成功のポイント

  1. 宗教・文化への配慮:食事制限、祈祷時間への配慮
  2. 日本語学習支援:業務に必要な日本語能力の向上支援
  3. 職場内コミュニケーション:日本人職員への外国人材理解促進

2025年以降の外国人材戦略:持続可能な組織づくり

特定技能2号拡大を見据えた長期人材戦略

特定技能2号の対象分野は、介護分野も将来的に対象となる可能性があるため、最新の情報に注目することが重要です。

2024年6月の制度改正により、特定技能2号の対象分野が大幅に拡大されました。これにより以下が実現できるようになっています。

  • 長期雇用の実現: 特定技能2号では在留期間の上限がなく、家族帯同も可能
  • 管理職としての活用: より高度な技能を持つ外国人材の管理職登用
  • 組織の多様性向上: 多様な価値観を持つ人材による組織力強化

外国人材と日本人の協働で生まれる組織力向上

組織づくりにおける外国人材の受け入れは単なる労働力確保を超えて、組織全体のパフォーマンス向上をもたらすこともあります。

  1. 多様な視点の導入: 異なる文化背景からの新しいアイデア
  2. 若い世代の活力: 20~30代中心の年齢構成による職場活性化
  3. 国際感覚の醸成: グローバルな視点を持つ組織文化の形成

特に日本語のレクチャーなどで自然と会話も生まれやすくなり、雰囲気も変わることが期待できます。

人材不足時代を勝ち抜く長期的な採用戦略

持続可能な人材戦略のためには短期的な受け入れ体制のみでは不十分です。3年先5年先も見据えた体制や予算の最適化を図りましょう。

短期戦略(1~3年)

  • 技能実習生から特定技能への移行促進
  • 国内在住外国人の積極採用
  • 即戦力となる人材の確保

中期戦略(3~5年)

  • 特定技能2号への移行準備
  • 外国人材の管理職登用
  • 多様性を活かした組織運営体制構築

長期戦略(5年以上)

  • 永住権取得者の活用
  • 次世代リーダーとしての育成
  • グローバル組織としての競争優位確立

まとめ:効果的な外国人材活用に向けて

技能実習生と特定技能の違いを理解し、適切な移行手続きを実施することで、企業は持続可能な人材確保ができます。重要なのは、単なるコスト削減手段としてではなく、組織の成長と発展を支えるパートナーとして外国人材を位置づけることです。

成功の鍵となるポイント

  1. 制度の目的と法的要件の正確な理解
  2. 長期的な視点での人材投資戦略
  3. 適切な支援体制の構築と運用
  4. 文化的多様性を活かした組織づくり

ケアグローバルのサポート

専門的な知識と豊富な経験を持つケアグローバルでは、外国人材の受け入れから定着まで、トータルサポートを提供しています。管理費用についてもご相談に応じますので、お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ先

人材不足という課題を外国人材との協働により解決し、より強い組織を構築していきましょう。

※本記事の制度情報は2025年9月時点のものです。最新の制度変更については、出入国在留管理庁の公式情報をご確認ください。

参考文献

  1. 出入国在留管理庁「特定技能制度」 https://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/
  2. 出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」 https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/index.html
  3. 出入国在留管理庁「特定技能ガイドブック」 https://www.moj.go.jp/isa/content/930006033.pdf
  4. 出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数の公表」(令和7年6月末時点)
  5. 出入国在留管理庁「在留外国人統計」(令和6年12月末時点)
  6. 法務省「出入国管理及び難民認定法」
  7. 厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況」(令和6年10月末時点)
  8. 就職白書2020 https://shushokumirai.recruit.co.jp/wp-content/uploads/2020/06/hakusyo2020_01-48_up-1.pdf