【人材不足に】特定技能外国人とは?採用にあたって抑えておきたいポイント7選
深刻化する人材不足への対応として、多くの企業が注目している「特定技能外国人」。しかし、制度の詳細や採用のポイントを正確に理解している担当者は意外と少ないのが現状です。
本記事では、特定技能外国人の基礎知識から採用時の実践的なポイントまで、人材採用の現場で本当に必要な情報をお届けします。
特定技能外国人とは――日本の人材不足を解消する新しい在留資格

特定技能外国人とは、在留資格「特定技能」を持ち、日本国内で就労している外国人材のことを指します。2019年4月に創設されたこの制度は、深刻な人手不足に直面する日本の産業界において、即戦力となる外国人材を受け入れるために設計されました。
出入国在留管理庁の統計によると、2024年12月末時点で284,466人の特定技能外国人が在留しており、前年比136%という急激な増加を示しています(※1)。2025年6月末時点では速報値として321,740人に達し、制度創設からわずか6年で日本の労働力構造において不可欠な存在となっています。
※1 出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数の公表」(令和6年12月末時点)
技能実習との明確な違い:「労働力確保」を前提とした制度設計
特定技能制度の最も重要な特徴は、制度の目的が「労働力確保」であることを明確にしている点です。技能実習制度が「技能移転による国際貢献」を建前としているのとは根本的に異なります。
技能実習は日本の技術を学んで母国へ持ち帰ることを前提としているため、転職は原則として認められていません。一方、特定技能は外国人を労働者として受け入れることを目的としているため、同一分野内での転職が可能です。この違いは、企業が外国人材を長期的な戦力として活用する上で非常に重要なポイントとなります。
特定技能1号と2号の違いを正しく理解する

特定技能には「1号」と「2号」の2つの区分があり、それぞれ要件や受け入れ条件が大きく異なります。
特定技能1号:5年間の即戦力人材
特定技能1号は「相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務」に従事する外国人向けの在留資格です。在留期間は通算で上限5年まで(1年・6カ月・4カ月ごとの更新)となっており、技能試験と日本語試験(N4レベル以上)に合格していることが要件です。ただし技能実習2号を良好に修了した者は試験が免除されます。
同一の業務区分内または試験により技能水準の共通性が確認されている業務区分間において転職が可能ですが、家族帯同は基本的に認められていません。また、受入れ機関または登録支援機関による支援が義務付けられており、企業にとっては一定のコストと責任が発生します。
特定技能2号:在留期間無制限の熟練人材
特定技能2号は「熟練した技能を要する業務」に従事する外国人向けの在留資格で、1号よりも高い技能レベルが求められます。在留期間は3年・1年・6カ月ごとの更新で、更新回数に上限がありません。
各分野の特定技能2号評価試験に合格していることが必要で、分野によっては実務経験(管理指導経験など)も求められます。一部の分野(外食業・漁業)ではN3以上の日本語能力が必要です。要件を満たせば配偶者と子の帯同が認められ、永住権の取得も可能となります。受入れ機関による支援義務はありません。
介護分野における特定技能2号の現状
現在、特定技能2号の対象分野は11分野に拡大されていますが、介護分野は対象に含まれていません。これは介護分野には別途「介護」という在留資格が存在するためです。介護分野の特定技能1号取得者は、介護福祉士の国家資格を取得することで在留資格「介護」へ移行することが可能で、実質的には特定技能2号と同等以上の処遇が可能となっています。
【ポイント①】特定技能外国人を受け入れ可能な16分野を知る

特定技能制度では、人手不足が深刻な特定の産業分野に限定して外国人材の受入れが認められています。特定技能1号の対象分野は介護、ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、自動車運送業、鉄道、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、林業、木材産業の16分野です(2025年10月時点)。
介護分野は特定技能制度において最も活用が進んでおり、2025年6月末時点で175,210人が就労しています。業務内容は身体介護(入浴・食事・排せつの介助等)のほか、レクリエーションの実施、機能訓練の補助などです。2025年4月からは訪問系サービスへの従事も可能となりました。
各分野には共通の基本要件に加えて、分野特有の上乗せ要件が設定されています。介護分野と建設分野には受入れ人数枠があり、介護分野では常勤職員の総数と同数までとなっています。基本的には直接雇用が原則ですが、農業と漁業の2分野のみ派遣雇用が認められています。また、2024年6月14日から、特定技能外国人を雇用する前に対象分野の協議会へ加入することが義務付けられました。
【ポイント②】技能実習との5つの決定的な違いを把握する

特定技能と技能実習は名称が似ていることから混同されやすいですが、制度の目的や運用において大きな違いがあります。より詳細な比較については、こちらの記事で解説していますので、あわせてご参照ください。
制度目的と転職の可否
技能実習制度は技能移転による国際貢献が目的で、日本で技術や知識を習得し、母国の経済発展に寄与することを前提としています。一方、特定技能制度は日本国内の人手不足への対応が目的で、即戦力として働くことができる外国人材を労働力として受け入れることを明確にしています。
この目的の違いは転職の可否にも表れています。技能実習は原則として転職不可ですが、特定技能は同一の業務区分内または試験により技能水準の共通性が確認されている業務区分間において転職が可能です。企業は良好な労働環境と適切な処遇を提供することで人材を確保・定着させる必要があります。
在留期間と人数制限
技能実習は最長5年(1号1年+2号2年+3号2年)、特定技能1号は通算5年、特定技能2号は更新回数に上限がありません。人数制限については、技能実習は常勤職員の総数に応じた人数枠がありますが、特定技能は介護分野と建設分野を除き人数枠がありません。
技能実習生の失踪率は特定技能外国人と比較して高い傾向にあります。これは転職ができないという制度的な制約により、労働条件に不満があっても合法的な解決手段が限られているためです。特定技能では転職が可能なため、不満があれば合法的に転職することができ、結果として失踪率の低下につながっています。
【ポイント③】特定技能外国人の採用ルートを理解する

特定技能外国人を採用するには、主に2つのルートがあります。それぞれの特徴を理解し、自社の状況に応じて最適な方法を選択することが重要です。
ルート①:技能試験と日本語試験に合格した人材
特定技能1号を取得するための標準的なルートは、各分野の技能試験と日本語試験の両方に合格することです。技能試験は各分野の業務に必要な知識と技能を評価するもので、分野ごとに内容が異なります。試験は国内だけでなく海外でも実施されており、現地で試験に合格した人材を日本に呼び寄せることも可能です。
日本語試験は、日本語能力試験(JLPT)N4以上または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)200点以上(250点満点)のいずれかに合格する必要があります。介護分野では、これらに加えて「介護日本語評価試験」への合格も必要です。
ルート②:技能実習2号からの移行者
技能実習2号を良好に修了した外国人は、特定技能1号へ移行する際に試験が免除されます。日本語試験は技能実習2号を良好に修了していれば無条件で免除され、技能試験は技能実習での職種・作業と特定技能での業務に関連性が認められる場合は免除されます。
技能実習2号からの移行者は、すでに日本での就労経験があり、日本語能力や日本の労働環境への適応力も一定程度身についているため、即戦力として期待できます。また、採用コストや受入れ準備期間も短縮できるというメリットがあります。
海外採用と国内採用の比較
海外採用は試験合格者の中から人材を選べるため一定の技能レベルが保証されていますが、在留資格認定証明書の取得から入国まで3~6ヶ月程度かかり、渡航費用(10~20万円程度)や入国後の生活立ち上げ支援の負担が大きくなります。
国内採用は採用から就労開始までの期間が短く(1~2ヶ月程度)、面接時に直接会って人柄や日本語能力を確認できるメリットがありますが、採用競争が激しく、良い人材の確保が難しい場合があります。
【ポイント④】受け入れに必要な義務的支援計画を策定する

特定技能1号外国人を受け入れる企業は、外国人が安定的かつ円滑に活動できるよう、職業生活・日常生活・社会生活における支援を実施する義務があります。
10の義務的支援内容
出入国在留管理庁が定める義務的支援は、事前ガイダンス(3時間以上)、出入国時の送迎、適切な住居の確保、生活に必要な契約支援、生活オリエンテーション(8時間以上)、公的手続きへの同行、日本語学習の機会提供、相談・苦情対応、日本人との交流促進、転職支援(企業都合の場合)の10項目です(※2)。
これらの支援に要する費用は、特定技能所属機関等が負担することとされており、直接または間接に外国人に負担させることはできません。住居に関する費用は、賃貸借契約の保証料や仲介手数料(初回のみ)は企業負担、敷金・礼金、月々の家賃、光熱費は外国人本人負担となります。
※2 出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」(令和7年4月1日改正)
登録支援機関への委託
受入れ企業が過去2年間に外国人(就労資格を持つ中長期在留者)の受入れ実績がない場合や、支援担当者が外国人と十分に意思疎通できる言語で業務を遂行できる体制を有していない場合などは、登録支援機関に支援業務の全部を委託することが必要です。全部を委託することで、支援体制の基準を満たしているとみなされます。
受入れ実績があり、社内に適切な支援体制が整っている場合は、支援業務の一部を自社で実施し、残りを登録支援機関に委託することも可能です。
【ポイント⑤】採用から就労開始までの具体的なフロー

特定技能外国人の採用には、在留資格の申請や各種支援の実施など、日本人採用とは異なる手続きが必要です。
標準的な受入れプロセス
1ヶ月目は相談・面接のフェーズです。受入れに関する相談(住居、費用、採用プロセス等)を行い、過去の成功事例に基づいたアドバイスを受けます。面接は現地またはオンラインで実施し、募集人数の2~3倍の候補者から選考します。介護分野の場合は介護資格取得済みの候補者が対象となります。
2ヶ月目は書類手続きです。雇用契約書の作成、1号特定技能外国人支援計画の策定、在留資格認定証明書交付申請(海外在住者)または在留資格変更許可申請(国内在住者)を行います。
3ヶ月目は入社手続き・就労開始です。在留資格の許可を得て、海外在住者の場合は査証(ビザ)の申請・発給を経て入国します。空港から事業所または住居への送迎、市役所での住民登録等の手続き(支援機関が代行可能)を行い、就労を開始します。
入国後の重要手続き
外国人が入国した後、遅滞なく生活オリエンテーション(8時間以上)を実施します。日本での生活ルール、公共交通機関の利用方法、医療機関の利用方法等を説明します。また、住民登録(入国後14日以内)、国民健康保険の加入、銀行口座の開設、携帯電話の契約などの手続きを支援します。
ケアグローバルでは、入国後の一連の手続きをサポートし、企業の負担を軽減しながらスムーズな受入れを実現しています。
【ポイント⑥】日本人採用と比較した費用対効果を算出する

特定技能外国人の採用を検討する際、費用対効果は重要な判断材料となります。
初期費用と3年間の総コスト比較
海外在住者を採用する場合の初期費用は100~150万円程度です。内訳は人材紹介手数料(理論年収の20~35%程度)、在留資格認定証明書交付申請費用(4,000円)、渡航費用(10~20万円)、住居確保費用(20~40万円)、生活必需品準備費用(10~20万円)、登録支援機関への初期費用(5~15万円)となります。
国内在住者の場合は60~130万円程度、技能実習2号からの移行の場合は20~80万円程度です。参考として、就職みらい研究所の「就職白書2020」によると、日本人の中途採用1人あたりの平均採用コストは103.3万円です(※3)。
3年間の総コストで比較すると、日本人中途採用は約1,300万円(初期103万円+年間給与400万円×3年)、特定技能外国人(海外採用)は約1,350~1,450万円(初期100~150万円+年間給与350万円×3年+支援費用約100~240万円)となり、概ね同程度です。
※3 就職みらい研究所「就職白書2020」
登録支援機関への委託費用
登録支援機関への委託費用の相場は、初期費用が5~15万円/人、月額委託費用が2~5万円/人で、3年間の総額は約77~195万円/人となります。自社で支援を実施する場合は委託費用を削減できますが、支援担当者の人件費や業務負担が発生します。初めての受入れの場合は、登録支援機関に委託し、ノウハウを学びながら徐々に自社対応の範囲を広げていく方法も有効です。
【ポイント⑦】受け入れ失敗を防ぐリスク管理の実践方法

特定技能外国人の受入れを成功させるためには、事前のリスク管理が不可欠です。
よくあるトラブルと対策
コミュニケーション不足による誤解は、日本語能力の過大評価や文化的背景への理解不足が原因で起こります。業務指示が正確に伝わらず作業ミスが頻発したり、暗黙の了解が理解されないケースがあります。定期面談(3ヶ月に1度以上)の実施、多言語対応の仕組み構築、メンター制度の導入が有効な対策となります。
労働条件に関する認識の相違は、事前説明不足や雇用契約書の内容が十分に理解されていないことが原因です。残業時間や給与の手取り額に関する認識の違いが生じることがあります。詳細な雇用契約書の作成と外国人が理解できる言語での説明が重要です。
生活面でのトラブルは、生活習慣の違いへの配慮不足が原因です。ゴミの分別ルールや宗教上の配慮(礼拝時間、食事制限等)について、事前に丁寧に説明し、理解を得ることが必要です。
法令違反を防ぐチェックポイント
労働条件については、日本人と同等以上の賃金を支払っているか、最低賃金を下回っていないか、残業代を適切に支払っているかを定期的に確認します。支援については、義務的支援の10項目をすべて実施しているか、3ヶ月に1度以上の定期面談を実施しているかをチェックします。
保証金や違約金を徴収していないか、パスポートや在留カードを取り上げていないかなど、禁止事項についても注意が必要です。住居は1人当たり4.5㎡以上を確保し、住居費用は実費相当額とすることが求められます。
2025年以降を見据えた持続可能な外国人材活用戦略

特定技能制度は今後も継続的に変化していくことが予想されます。中長期的な視点で外国人材活用戦略を構築することが重要です。
育成就労制度と特定技能2号の活用
2024年6月に「育成就労制度」の創設が閣議決定され、技能実習制度は段階的に廃止されます。育成就労制度は特定技能1号への移行を前提とした制度設計となっており、3年間の育成期間を経ることで、より高い技能と日本語能力を持つ人材の確保が期待できます。
特定技能2号の対象分野は2023年に11分野へ拡大されました。2号では在留期間の更新に上限がなく、家族帯同も可能なため、外国人材の長期雇用の道が開かれています。企業はキャリアパスを明確化し、2号試験合格のための支援を行うことで、優秀な人材を長期的に確保することができます。
介護分野は特定技能2号の対象外ですが、介護福祉士の国家資格取得により在留資格「介護」へ移行することで、実質的に同等以上の処遇が可能です。
外国人材と日本人の協働
外国人材の受入れは単なる労働力確保を超えて、組織全体のパフォーマンス向上をもたらす可能性を秘めています。異なる文化背景からの新しいアイデア、20~30代中心の活力、国際感覚の醸成など、多様性がもたらすメリットは大きいものです。
異文化交流イベントの定期開催、外国人材の意見を経営に反映する仕組み、バディ制度の構築など、外国人材と日本人が互いに学び合い、成長できる環境を整えることで、組織全体の力が高まります。
まとめ:特定技能外国人採用で人材不足を解決する第一歩

特定技能外国人の受入れを成功させるためには、制度の正確な理解、長期的な視点での人材投資、適切な支援体制の構築、多様性を活かした組織づくりが重要です。
ケアグローバルでは、相談から就労開始までワンストップで対応し、質の高い人材のご紹介、書類手続きの丁寧なサポート、入国後の手厚いフォローを提供しています。介護資格を取得済みの20~30歳の若い人材を中心にご紹介し、夜勤や体力が必要な仕事にも対応可能です。管理費用は企業の状況に応じてご相談に対応いたします。
特定技能外国人の採用に関するご相談は、お気軽にケアグローバルまでお問い合わせください。
ケアグローバル
- 電話: 090-5592-5497
- メール: info@careglobal.jp
- 対応時間: 平日9:00~18:00
人材不足という課題を外国人材との協働により解決し、より強い組織を構築していきましょう。
※本記事の制度情報は2025年10月時点のものです。最新の制度変更については、出入国在留管理庁の公式情報をご確認ください。
参考文献
- 出入国在留管理庁「特定技能制度」https://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/
- 出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数の公表」(令和6年12月末時点)
- 出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」(令和7年4月1日改正)
- 厚生労働省「介護分野における特定技能外国人の受入れ事例」(令和3年3月)
- 就職みらい研究所「就職白書2020」